大元登記測量事務所
不動産登記・測量・境界確定を行う土地家屋調査士事務所です。ちなみに当サイトを運営しているのも事務所代表の大元が組織する㈱hybridです。
14meets
沖新田の人々を紹介し、その人に迫るコーナーの人旅。今回の旅先は操南公民館で館長を務めていらっしゃる『萩原正彦』さんだ。
市役所に37年間勤めた後、萩原さんが館長として操南公民館に着任したのが平成19年4月のこと。以来8年にわたり公民館館長として地域住民のために職務を続けてこられている。
一口に8年といっても通常、公民館の館長の任期は3年。1年で交代する公民館もあるくらいだ。長きにわたり続けてこられたのは地域住民の支持が高いという証なのだ。
操南公民館は操南小学校の真向かいに位置し、多様なクラブ、講座などが開講されており、小学生からお年寄りまで自由に利用できる施設。
毎日多くの人が訪れている。その利用者の方々を笑顔で迎えてくれるのが萩原館長。萩原さんご自身も操南学区の地元住民。利用者の方々との絆を大切にしている萩原さんは利用者との距離も近い。気さくに言葉を交わし温かい心遣いもしてくださる。 そんな萩原さんの人柄に惹かれ着任以来、利用者が着実に増加した。
萩原さん『公民館は仲間作りの場。利用者の年齢層も高齢者が多かった最初の頃に比べて若い人、子供達など幅広い層が来てくださるようになった。気軽に利用できる、誰でも行けるんだという感覚を皆に持ってもらいたいのです。』
と萩原さんは言う。最近では子供向けの『ヒップホップダンスクラブ』『ジュニア3B体操』
『キッズ英会話』など小学生が下校途中に立ち寄り、公民館で地元の方々と講座を通じて
交流する。
共働きの家庭の子供は下校しても家に両親は居ない。だけどここに来れば萩原さんや地
域住民方々が居られる。温かく迎えてくれる場所があればきっと子供達も寂しくないはず
だ。
公民館で開講されている講座は書道や茶道、生け花、クレイクラフト等の他に高齢者向けの『寿大学』がある。月2回のペースで健康、時事問題など講師を招いてさまざまな講演講座が開かれる。こちらも参加者が当初40名から今では100名を超えている。
参加者は『月2回の講座が楽しみです』『いろんなお話が聞けるので勉強になる』『寿大学が生き甲斐になっています』という声をアンケートで萩原さんに伝えてくれるそうだ。きっと、萩原さんにとっても地域住民の方々の喜ぶ姿が『やりがい』になっていると僕は思う。
さらに『男の料理』というユニークな講座もある。参加者は男性ばかり、地元の女性達が男達に家庭料理を伝授し、一緒にその日のメニューを作り、食べる。もちろん萩原さんも参加者の手作り料理をお昼ご飯で一緒に食べる。楽しい会話と食事、萩原さんはここでも利用者の方とのコミュニケーションを欠かさない。
萩原さん『自分で作った料理は味わいが違う。それを実感してもらうことにこの講座の意義があるのです。料理は認知症の予防にもなるのですよ。』
僕も驚いたのが『男性合唱団コールケロッグ』というクラブがここでレッスンしているということだ。萩原さんが就任した当時から続いていて8年目。定年後、歌を歌いたいと願う男性達が集まり次第に参加者が増えた。
萩原さん『とてもレベルの高い合唱団ですよ。男性合唱団があるのは操南公民館だけ。とても稀有なのです。それに彼らは老人ホームや施設などでコンサートを開き慰問活動をしている。歌を聴いて感動している人達を見て合唱団員達も喜びと感動をもらっているのです。』
ここは、人々が生きるために何より大切な、『生き甲斐』や『誰かの役に立っている』と実感することを与えてくれる施設なんだ。引退しても人生は続いていく。地元のおじさんおばさん達には第二の人生に刺激と温かみと感動を感じながらいつまでも輝いていて欲しいなあと僕は強く思う。
萩原さんが成し遂げた事業を2つご紹介したい。操南公民館のESDと位置づけた取り組みだ。
『わが町操南DVD制作』
これは開講されていたビデオ講座の卒業制作が原点だが、操南学区の歴史にスポットをあてて、地域の歴史再発見をしてもらいたいという願いから取り組まれた歴史探訪ビデオ。
文書ではなく映像で残すことによってより多くの方々に分かり易く地域の事を知ってもらうのが趣旨だ。
ストーリーの筋書きは萩原さんが自ら地域の事を勉強し行った。操南は干拓の歴史があり、水の確保に先人達は苦労した。飲み水、田畑に与える水。その苦闘を中心にまとめたそうだ。制作期間は2年。忙しい中諦めずに継続し、やっと形に出来たときの喜びは大きかったことだろう。
萩原さん『地域の方々からも好評でした。学校や住民、多くの方々に見てもらえた。そし
て昔の事を知ってもらうきっかけになったと思います。地元の方から「ありがとう」と言ってもらえたのが何よりうれしかったです。』
『操南八景』
地域の美しい景観を住民らの投票で選考する取り組みだ。『自然地区景観』(風景を対象にしたもの)『歴史・伝統景観』(史跡や神社など)2部門から8つずつピックアップした。
八景には地域の歴史が今に残り、美しい景色を見せてくれる場所ばかり。
僕も知らない所もあった。住民の方も新たに知る場所がきっとあるはずだ。
年内にはパンフ化する予定。八景マップを多くの人の手にするだろう。映像と文書による歴史探訪発信。見事に萩原さん達協力者は成し遂げたのだ。
萩原さん『私も地元住民ですから思い入れがありますよ。パンフを手にして自分の足で歩いて美しい地元の景色を楽しんでもらいたい。それも地域の歴史の再発見なのです。』
操南学区はかつて江戸時代、大規模な干拓事業により形作られ『沖新田』と呼ばれる。
沖新田には『88箇所巡り』が存在したそうだ。1800年代の『版木』が地域民家から
発見され、現在の地図に場所等を落とし込む作業が行われた。
この88箇所を萩原さんは自らの足で歩かれたそうだ。その中で地域の自然に触れ、景
色に触れ、歴史を感じたそうだ。
萩原さん『自分の足で歩くからこそ景色を感じられる。車ですとアッという間ですが歩く
と見えてくる景色はまた違い、美しいものですよ。』
『操南健康ウォーキング』という講座の中で萩原さんは先頭を歩き地元住民の方々を連れ
て地域の景色再発見ウォーキングもやっておられる。元気に住民達を先導する萩原さんを
僕も見た。とても生き生きした足取りでそこには参加者の方々の笑顔があった。
最後に『心の言葉』。萩原さんはどんな言葉を胸に生きてこられたのだろうか。
『人の悪を言わず、自分の善を語らず』
これは自戒の意味も込めていつも胸においている言葉だそうだ。
人は悪口を言ってしまうものだ。だがその行為は自分自身の次元を下げてしまっている行
為に他ならない。人をどうこう言う前に『自分は言う程の人間であるのか』それを見つめ
るべきだ。人のことを揶揄せず己が成す事に集中する。
地域の方々に愛され続ける萩原さんらしいお言葉だ。過去に任期満了で館長職を退職す
るかもしれないという時、利用者の方々、住民達が声をそろえて『まだ辞めないでほしい』
との声が沢山あがった。それこそが今までやってこられた萩原さんの人柄や仕事ぶりの証。
自らが語らずともちゃんと皆に伝わっているんだ。
利用者が増えたことも萩原さんのパーソナルな力が大きいと僕は考える。迎えてくれる
人が『良い縁』を導くのだ。そして思いはきっと人に届く。だからこそ今の操南公民
館があるのだ。8年の間には出会いや別れが沢山萩原さんにあったことだろう。人との縁
を大切にしながら今日も萩原館長は利用者達に笑顔で迎える。
その胸にあるのは『地元愛』『ここに住まう人々が好き』という慈愛の心なんだ。
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