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『人旅』 12meets

難波宏一さんに人旅

沖新田地区の魅力的な方々を訪ね歩く旅、今回の旅先は『㈲難波製畳所の難波宏一さん』。

難波製畳所の歴史は深い。今から約300年前より創業し、現在も畳の製造を続けている。

難波さんも子供の頃から畳が身近にある生活をして育った。

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育った家のすぐ近くに製畳所があり、難波さんのお父上は家業を継ぎ畳を製造していた。

当然難波さんも長男であるので家業を継ぐものであると僕は思ったが、現実にはそうではなかった。

学校を卒業した後、難波さんは何と造船会社に就職しサラリーマンとなった。お父上も家業を息子に継いでもらいたいと思ってはいたのであろうが、無理強いをすることはなかった。自然の流れに任せていたのかもしれない。

サラリーマンを続けて難波さんが31歳になった頃。会社を退職。畳の世界に入門することになった。

これは親の意思ではなく、難波さん自身が選んだ道だ。でも僕は思う。きっと難波さんにも畳屋の血が脈々と流れていて、かつての先人達が難波さんを導いたのだろう。

 

畳屋の長男と言っても製造工程、技術、専門的知識などはゼロに等しかった。

つまり31歳の事始めということになる。まずお父上と共に日々の業務をしながら、一から勉強した。

お父上も難波さんのお爺さんから教わったようにだ。一子相伝。親から子に伝え続ける仕事。300年続いてきた家業とは古来、武道の奥義を代々に伝え続ける様に似ている。

 

難波さんは言う。『ゼロからの出発だったけど辛いとは少しも思わなかった。それどころか、「僕にはこの仕事が向いている」と覚えれば覚えるほど思うようになりました。』

畳は 畳の骨格でもある本体を仕入れ⇒加工するという流れで製造される。

加工の部分を製畳所が行うわけだが大きく分けて2つの工程を経る。

まず仕入れた本体に畳表を張る『はりつけ』という工程で上下をしっかりと固定する。さらに『框(かまち)』という縁を縁取りして完成だ。

 

工程自体は機械を使って行うので昔ほど大変ではないらしい。

しかし、寸法取りなどを怠ると製品の出来に大きく影響し、現場での納品時に畳が部屋に収まらなくなってしまう。寸法取りが一番気を遣うところだそうだ。

 

『一枚一枚、納得のいくものを作りたいと思います。』難波さんの発言はやっぱり職人の言葉と思いが詰まっている。入門して4年だが、もうしっかりした職人の一人である。

大元  『畳屋の仕事で一番のやりがいやうれしい事は何ですか?』

難波さん『畳を現場で納品し、敷き詰めていく時、ちょっとの隙間もなくバシッと入った時、「やったぜ」という感じになりますね。隙間は絶対に許せないのです。』

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夏の作業場は蒸し風呂のようになり、体力を奪われる。冬の作業場はコンクリート床なので底冷えが凄まじく、道具の包丁を研ぐ時は手が千切れそうになり冷たい。結構大変な思いもするだろう。

だけど難波さんは畳屋の仕事の話をするとき『いい顔』をしている。根っからの畳屋だと僕は思う。

 

畳屋を取り巻く現在の状況や環境は必ずしも良いとは言い難い。高齢化が進み、若い人達が後を継がない所もある。藁もコンバインなどで農家の人が刈っているので短いものになっており、昔のように手で刈る、畳用の長い良質の藁が少なくなっている。

 

だが、大型の案件をお互いに協力してこなしたり、廃業する畳屋さんが同業者にお得意さんを譲ったりと仲間意識をしっかりと持った個人の畳屋さん達を僕は心から応援したい。

 

かつての日本家屋は材木屋、大工、畳屋、瓦屋など多くの職人達がそれぞれの技術を結集させて作り上げたものだった。それは職人達の技の具現化形。人の思いがこもり、温かみがあったはずだ。

 

現在は軽量鉄骨住宅などが多くなり、そういった技術の結集という家屋は少ないかもしれない。でも時代がどんなに移ろっても、ずっと続いてきた日本家屋は絶滅させてはいけないし、職人達の技術も風化させてはならないと僕は難波さんのお話を聞いて思った。

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最後に恒例の『心の言葉』。難波さんはどんな言葉が人生に影響を与えただろうか?

 

『サッカーの三浦和良選手が語った言葉が心を打たれ印象に残っていますね。

 

「サッカーに失礼のないように準備してシーズンに臨みたい」

 

サッカーを神聖化していて、その域まで自分を鍛え上げる。その姿勢が素晴らしいです。』

 

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