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人旅 22meets 『田辺典明さん』

沖新田の魅力的な方を旅する人旅。今日の旅先は、沖新田で、日本軍艦の模型を趣味で作り続けておられる『田辺典明さん』を訪ねた。

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日本の軍艦に対してどんな強い思いを持っておられるのだろうか。

早速、田辺さんにお話を聞かせていただこう。

 

田辺さんと日本軍艦との出会いは小学校5年生頃まで遡る。

近所の友達のお兄さんは映画の看板画家だった。そのお兄さんが何枚も日本軍艦の絵を描いていたそうだ。友達がその絵を仲間にあげていた。田辺少年が手にした一枚の絵。

『戦艦大和』の船画だった。墨一色で書かれたものでそのシルエットはどこまでも美しく、その姿は「人が作った最も美しいものではないか」と田辺少年の心を鷲づかみにしたのだ。

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『戦艦大和』の勇姿

 

戦艦大和の絵との出会いにより、すっかり軍艦の虜になった田辺さんは、軍艦の模型を作り始めた。子供ながらに軍艦をその手にしてみたいという思いが沸いたからだろう。

当時はプラモデルというものはなく、模型は木製のキットが流通していた。その木製キットのコレクションを集めることが楽しくてしかたなかったそうだ。

最初に造った軍艦は『戦艦山城』だった。

 

山城を皮切りにどんどん作品は増え続けた。そして時代の変遷と共に『プラモデル』が世に出始める。学生時代には連合艦隊の艦船を数多く作ったそうである。現在はそのコレクションは手元にないが、想像しただけでもワクワクしてくる光景だ。軍艦模型で艦隊が編成出来るなんて、男子なら誰だって胸が高鳴る。

田辺さんが夢中になったのも僕は十分理解出来る。

 

軍艦模型作りの趣味の一つ目のターニングポイントは田辺さんが大人になって社会に出た時だった。仕事が忙しく趣味の時間がなかなか作れなくなっていき、次第に軍艦プラモデル作りをお休みする事が多くなった。ライフスタイルの変化により『作りたくても作れない』時期が長く続いた。代わりにその没頭するパワーはやりがいと面白みを感じるご自身の仕事に心血を注いでおられたのだろう。

 

軍艦模型作りの趣味はここで自然消滅してしまうのが普通考えられる結末だが、日本軍艦と縁のあった田辺さんは全く違った。

定年を迎える頃、『定年してからの生活の中で何かこれからの楽しみをみつけよう』と思うようになった。

その時、社会に出て止まったままの『日本軍艦への情熱の時計』は長年のブランクが嘘のようにしっかりと動き始めるのだ。

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『そうだ、子供の頃から好きだった日本軍艦の模型をもう一度作ってみよう』

この時が、二つ目のターニングポイント。

田辺さんのカムバック1発目の作品は『駆逐艦桜』。

なんでも、初めてのお孫さんのお名前が、『咲華(さくら)』で『駆逐艦桜』となったそうだ。

 

プラモデルも長年の月日で進化しており、田辺さんが好んで作られているシリーズは

『ウォーターラインシリーズ』の『連合艦隊シリーズ』と呼ばれるものだ。

船のプラモデルは船底まで再現されているものもあるがこのシリーズは海に浮かんでいる状態で見える船影を再現されているところが特徴だ。

それに700分の1という統一されたスケールでしっかりと縮小再現されたモデル。何といってもリアルなのだ。

模型を作りながら田辺さんはふと考える。

『ただ模型を作りコレクションするだけではなく、何かもっと意味をもたせたい』

そう思い始めた。

子供の頃は軍艦を作って集めることで満足していたが人生経験を積まれたせいだろう『趣味を自分の中でワンランクアップさせたい』と思われたのだ。

 

大人になって金銭的にも子供の頃より制約がなくなった分、より高価な模型に手を出すといったコレクターもいるが、田辺さんはここでも違った。

『日本海軍艦艇を作りながら戦史を学ぼう。それも一つの戦役に特化して研究してみたい』

 

田辺さんが選んだ太平洋戦争の戦いは『ガダルカナル島戦役』だ。

この戦役は日本にとっても天王山ともいうべき戦いであり太平洋戦争史の中でも重要なターニングポイントとして有名だ。

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当時のことについて書かれた書籍や雑誌を集めては深く読み解く、その作業の中で新たな目標が見えてきたそうだ。

 

田辺さん『これから10年かけてカダルカナル戦役を研究して、10年後には本を書きたいと思っています。詳しい年表を作成して時系列に当時起こった事を掘り下げ、研究した論文を肉付けしていくそんな作業をひとつの本にしてみたいのですよ。そうですね、「ガダルカナル辞典」あるいは「ガダルカナル日記」というような本を!』

 

楽しみから新しい目標を見つけ、勉強する姿に僕は感服した。

 

現在手元にあるコレクションをテーブルの上に並べてくださっていた。テーブルの上は海上そのもの。その海上に勇壮に浮かんでいる日本艦船達、『三川艦隊』と呼ばれる艦隊の軍艦たちを一つ一つ作ってこられた。

IMG_3301 - コピー 『三川艦隊』。迫力満点だ。

田辺さん『どうせ作るなら、無計画に作るより、実際の海戦で戦い、編成されていた艦隊をピックアップして作ってみようと思いまして…ちょっとした自分の中でのこだわりですよ。』

 

田辺さんは笑顔で僕に話してくれた。

 

グループ化した製作活動の次の予定は『伊藤艦隊』。田辺さんが軍艦好きになったきっかけをくれた『戦艦大和』が沖縄特攻の戦いに赴く際に編成された艦隊だ。

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大元 『日本軍艦の魅力とは田辺さんにとって何ですか?』

 

田辺さん『無駄な装飾など一切無く、必要な装備のみを最大限に組み込まれている。絶妙にバランスが良い軍艦であるから美しい。そこに尽きますね。』

 

大元  『数ある日本軍艦の中で田辺さんが好きな艦船は何ですか?』

 

田辺さん『天龍をはじめとするやや旧式といわれている艦で太平洋海戦で第一線に投入され、最前線の熾烈な戦火をくぐり抜けた艦船ですね。意外に思われるかもしれないが、『大和』など当時の最新鋭の装置や装備を搭載したエリート艦よりも、『天龍』のように二線級の船が好きです。実戦の中で期待以上の戦果を上げた艦船に惹かれるのですよ。』

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最後に『こころのことば』。その人がいつも心の中に持っている言葉、人生に影響を与えた言葉をお聞きしている。今回は取材の中でその『ことば』が語られていた。

 

 『船は人と同じ。船にも人の人生と同様。その船自身にストーリーがある。』

 

田辺さん『軍艦にも人の人生のように運が良かった船、悪かった船。それぞれにめぐり合わせがあるのです。それぞれの戦績も人が功績を残せたかそうでないかと同じように軍艦にもある。だから私は軍艦と言わずに親しみを込めて『艨艟(もうどう)』と呼んでいます。』

『艨艟を作りながら、「あの戦いをあなた頑張ったねえ」と思いながら作るんですよ。形やフォルムだけではなくその艨艟が辿った軌跡についても愛すべき魅力があるのです。』

 

太平洋戦争で帝国海軍は、大型戦艦を建造し艦隊を組織した。しかし海の戦いは戦艦

の戦いから、航空機の戦いに変貌しており、その戦い方の進化の中で連合艦隊の艦船は航

空機たちに対し持てる力の限りを尽くして戦った。

 

その戦う姿は、海の戦いの変貌を断固拒否する強い意思のようなものだったのかもしれ

ない。

 

田辺さんはこれからも艨艟を作り続ける。子供の頃手にした一枚の絵に衝撃を与えられ

てから何十年も経っているのにその時の衝撃はずっと田辺さんの中に生き続けているのだ。

大人になっても少年の心を失わない田辺さんが好きな艨艟たちは、田辺さんに楽しさだ

けでなく、生きる喜びや目標を与え続けている。

それは素晴らしい事だと僕は思った。

いつまでも、製作を続けてもらいたい、そして是非『伊藤艦隊』完成時には僕もその艦船達を並べた光景をみせてもらいたいと思う。

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