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『人旅』　7meets

平田智子さんに人旅

今日の人旅は、平田釣具店の女将さん、平田智子さんだ。大昔、三蟠鉄道という鉄道が学区に通っていた当時、駅長さんの養子になった旦那さんのお嫁に嫁いだ平田さん。車社会への以降と共に鉄道も廃線となったが、飽塩～三蟠を結ぶ渡船業を平田家は展開していた。

昭和３８年。沖新田には渡船業を営む者も存在した。しかし児島湾大橋が完成すると利用客の激減、渡船の意義がなくなり、廃業を余儀なくされた。便利さを手にした時、それまで存在していた何かが消滅する。時代の流れとはいえ、僕は寂しい気持ちになる。

昭和４０年。竹さおを使った『ハゼ釣り』がブームとなり、新岡山港には沢山の釣り人で賑わい、ゴカイなどの釣りえさを売るお店が旭川沿いに出来た。平田家もこのブームに目を付け、釣りえさを売り始めた。渡船業も衰退し始めていた状況から、事業転換の必要を感じておられたからだろう。　平田さんは結婚２年目にして、当初では考えられない生活をすることになる。朝、売るためのゴカイを掘りにご主人と出かけて、泥にまみれながら辛い作業をする。そしてお店にもどって釣り人にサービスを提供する。平田さん　『働いたよ。ほんとによく働いたと思う。朝は４時から夜遅くまで。結婚前は

オシャレが好きでね。服が汚れる仕事なんてする気もなかった。女性なら誰しもそうだと思う。だけど不思議なものね。商売の為と決めたら、辛くても頑張れたのよ。』

釣りえさの商売は思いのほか調子が良く、次第に釣り具も少しずつではあるが、店内に陳列するようになり、やがて平田家は渡船業を止め、釣具店としてやっていくことになる。

平田釣具店では多くの釣り人が出入りした。もちろん、えさや釣具を買いに来るお客さん達だが、平田さんの顔が見たくてお店に寄るお客さんもおられた。

誰にでもフランクに話をしてくれて、明るく、朗らか。よく笑う平田さんはお客さんからも大人気。『姉さん、姉さん』と皆のお姉さん的存在となり、三蟠でちょっとした有名人になっていった。

以後４８年間！平田釣具店の女将さんとして店をキリモリして来られたのだ。

大元　　『振り返ってみて、何を思いますか？』

平田さん『忙しい毎日を日々生きてきたけど、悩みは無かった。お金に苦労することもなかったし、仕事が楽しかった。思い出も楽しかったものしか思い浮かばない。私を訪ねてきてくれる常連客。「今日は釣れた、釣れなかった」と釣りの話をしてくれたり、いろんな話をして帰っていくお客様のお相手をするのは幸せだった。』

『辛いとか苦しいと思ったことは一度もない。いい人生だったと思う。』

平田さんは遠慮がいらない憎めないキャラクターだ。だからこそお客様の心にスッと入りお客さんも平田さんが好きになったんだろう。何より、平田さん自身、人が好きで、お客さん達が好きだった。自分を好きになってもらいたいならまず相手を好きになることから。それを僕は平田さんに教わった。

平田さんのお顔はとてもイイ顔相をしておられる。４８年間の人との出会いや別れ、交流が今の彼女の顔を作り上げた。平田さんはとても素敵な女性だと僕は思う。

現在も平田釣具店で女将を続けながら、国内、海外旅行でいろいろな場所を長年連れ添ったご主人や友達と訪れるのが今の楽しみだ。きっとお客様をお待ちする仕事をずっとしてこれらたから、外へ外へ足が向くのかもしれない。平田さん　『世界をめぐるクルージングにも行ったんよ。これが写真、見て。』

楽しそうに旅の思い出話と写真を僕に披露する平田さんはどこまでも人生を謳歌しておられるように思える。

最後に恒例の『心の言葉』

大元　　『奥さんが好きな言葉、支えになった言葉ってありますか？』

平田さん『私はね。努力、忍耐、健康が好きな言葉なんよ。』

『努力』　人は努力しなければ成長しない。やった事ない仕事を必死にやってこられたのも努力あってのこと。

『忍耐』　不便を感じたり、不満に思う前にグッとこらえて物事を真正面から取り組んでいく。オシャレが好きだからといって、作業着を着て泥にまみれるのを嫌がっているようでは務まらなかったと思う。

『健康』　体が元気なら、明るく毎日が暮せる。健康なら何でもできる。地位やお金以上に価値があるもの、それが健康だと今は思う。

平田さんは3つの言葉を僕にくれた。これらは『成功』するために必要な要素全てが詰まっているように思う。女性店主としてビジネスで成功収められた彼女らしい心の言葉だ。

きっと僕もこれから平田さんの顔を見たくなって、訪れるお客さんのようにココを定期的に訪れるようになるだろう。平田さんは人を惹きつける魅力を持っている。それにこのお店自体にも人を呼び寄せる力があるのではないだろうか？