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『人旅』 9meets  

地域の魅力的な方々にお会いする旅。今日の旅先は『㈲智久木材 忠津智久社長』だ。忠津さんは四国徳島出身。社会に出て地元の木材屋で働いていたが、もっと木材についての知識や技術の向上のため、奥さんを連れて東京の材木会社で修行をした。 東京で数年間過ごした頃、親戚の叔父が経営していた岡山の木材店に来ないか?とオファーが舞い込む。叔父さんの後継者が居ないという事が理由だった。東京から岡山に越して新しい生活にも慣れ始めた頃、人生の転機が訪れる。 社長である叔父さんが他界したのだ。それを機に昭和56年、一念発起して独立し豊浜の借地で事業を立ち上げ、昭和63年には現在の桑野に拠点を移す。当時、工場は建てたものの加工機械もなく裸一貫からの起業だった。

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忠津さんの工場には『ドイツ製の加工機械「モルダー」』がひっそりとたたずんでいる。木材を幾通りにもカット加工できるこのモルダーと忠津さんの数奇な運命について話をしてもらった。
話は豊浜時代へまた遡る。ある日初老の男性が木の板を買いに来た。彼は忠津さんに言った。『あんた。木材加工機械の展示会が毎年、名古屋など数箇所で開催されとる。会場では外国からも出展された最新鋭の機械が披露されている。それらを見るだけでも時代が読めるから一度行ってみるといい。』

何とはなしにその話を聞いていた忠津さん。その後、桑野へ工場を建て、事務所も移転したころ他の木工所が機械を置く場所を提供して、その機械を使わせてもらうことで仕事をこなしていた。
ふと、新聞の広告を眺めていると、『木材加工機械展覧会』の文字が忠津さんの目に飛び込んでくる。その時かすかに残っていた記憶の情報がリンクし、豊浜であった初老の老人の事を思い出した! 『よっしゃ!一度行って見てみようじゃないか』

 

苦楽を共にしていた、同志のAさん(仮称)と日曜日に日帰りの旅行を兼ねて名古屋の展示会にいくことになったのである。 会場では沢山の業界関係者でひしめき合っていた。忠津さんとAさんは別々に行動して多くのものを見ようと決めた。会場を練り歩くうちに忠津さんはある機械の前に立つ。『ドイツ製モルダー』大きなボディーで、別々の機械で行っていた工程の全てを一度で処理する最新最速機械。 デモでは角材を機械にかける筒状に瞬時に加工されていた。
『こんなモノが世の中にはあるのか!』

忠津さんのショックは想像に難くない。帰り道、Aさんもモルダーを見ていた。二人は『あれが俺達の工場にあったらなあ。欲しい、欲しいなあ』と夢を熱く語りあった。当時のモルダーは1000万円。設備のない智久木材が設備を整えるには総額で2000万円かかる。中古の機械の値段交渉で10万円をもう少し安くならないかといったレベルの二人には、大きすぎる額であった。 岡山に帰っても忠津さんは寝ても覚めてもモルダーの事が頭から離れない。そこでもし仮にモルダーを導入できたとしたらと仮定した。作業効率とコスト面など得られるプラス要因を全て検証し、数値化した。 『十分ペイできる!俺の推理なら必ず元は取れるはずだ』

だが2000万円もの資金をどうやって工面する?宛などない。 そこに神様の手が差し伸べられる。『振興財団の貸付融資』ベンチャー企業に対しての優遇した貸付があるというのを誰かから聞いてきたのだ。 忠津さんとAさんは直ちに申請の手続きを開始する。そして財団の担当者が智久木材にヒアリングに訪れた。

 

『おたくのところともう一社が候補に挙がっている。だが2000万円もの融資をかけて木材店が設備投資するのは前代未聞だ。』忠津さんは熱くモルダーの話を担当者に語り続けた。そして具体的数値を挙げた必勝のシナリオを。

 

かくして貸付してもらう権利を忠津さんは勝ち取ったのである。

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岡山でモルダーを導入したのは忠津さんが最初であった。当時の木材店のビジネスモデルは、木材を現場に輸送して現場で加工していた。だが智久木材は工場でモルダーを使い加工、その完成形を輸送して納品する新しいモデルを確立したのだ。 作業効率も格段に上がり、他者を寄せ付けない納期スピードを実現。莫大な売上げを上げ岡山でもその名を轟かせた。 今でも『モルダー』は忠津さんの工場にあり、今日も木材を自在に加工する。僕も見せてもらった。忠津さんとAさんが勝ち取った証だ。Aさんは既に他界されていたが、心の友を忠津さんは忘れることはない。

 

最後に『心の言葉』。人生で大切にしている言葉だ。

 

『継続は力なり』

『先んずれば人を制する』

 

諦めず戦い続けた忠津さんらしい言葉だ。毎年4月、智久木材では『ふれあい感謝セール』を開催している。木を愛してくれる人たちに忠津さん達が製作した木製小物を出展する。 ビジネスのカタチを変え、革命を起こした忠津さんはスゴイ男だ。僕は心からその偉業と困難に屈しない強靭な魂に敬意を表したいと思う。

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